高度認識

Age: 62 (Male)
Time in Sport: 2 years
Total Number of Jumps: 500
Skydives Within the Last 12 Months: 200
Cause of Death: メインキャノピーのマルファンクションの後、低高度でカットし、地面へ激突

・概要
通常の3wayジャンプの後、約2,000~2,500ftの間でプルしたが、メインキャノピーにラインツイストとラインオーバーマルファンクションが併発。
地上の目撃者によると、ラインオーバーによってキャノピーが蝶ネクタイのような形状になり、ゆっくりと旋回していたとのこと。
このジャンパーはラインツイストを修復しようとしていたが、キャノピーは旋回したまま下降を続けた。
約500ftでメインをカットし、そこから150ft降下した時点でリザーブリップコードをプル。
リザーブキャノピーが開く間もなく、地面へ激突して即死。

・結論
このジャンパーは、ラインツイストを修復している際、高度認識が無かったものと思われる。
メインキャノピーがおおよそ開いており、ゆっくりとした旋回であったこと、また、彼がラインツイストの修復に専念していたことから、ラインオーバーに気付いていなかった可能性もある。
あるいは、ラインツイストを修復すれば、ラインオーバーも解決されると考えていたかもしれない。
また、カットしたのが低高度(500ft)だという認識が無かったか、あるいは、その高度でもリザーブのオープンが間に合うと思っていたのかもしれない。
SIMのセクション5-1には、
「パーシャルマルファンクションが起こって降下している間、カッタウェイをするのに低くなりすぎたら、ジャンパーはカッタウェイせずにリザーブを開かせなければならない」
と記載されている。

このジャンパーのコンテナにはRSLが装備されていたが、メインライザーに接続されておらず、作動しなかった。
メインのカットから150ft降下した時点でリザーブリップコードをプルしたが、リザーブが開くほどの高度が無かった。
RSLはメインをカットすると速やかにリザーブキャノピーを放出するので、もしRSLが機能していれば結果は違うものになったかもしれない。
なぜRSLが接続されていなかったのかは不明である。

この事故の要因とは無関係であるが、彼がリザーブリップコードをプルしたあとにAADが作動していた。
メインをカットする前は、AADが作動するほどの降下スピードでは無かった。(AADが作動するためには78mph≒時速120km以上が必要)
加えて言うならば、AADはカッタウェイ後に作動するようには設計されていない。

「高度認識」は、スカイダイビングのあらゆる段階で重要であるが、特に緊急時にはその重要性が増す。
もし、メインを2,500ftでプルし、2,000ft、あるいはその下で開いたとすると、トラブルに対応する時間はほとんど残されていない。
USPAでは、B/C/Dライセンス保持者は1,800ftまでに判断し、緊急時の手順を実施するよう勧告している。
(スチューデントおよびAラインセンス保持者は2,500ftまでに判断、実施)

マルファンクション等で正しい対応ができるように、定期的に緊急時の手順を確認しておくことが必要である。

System: Mirage Systems G4
Main: Aero Tech Apache 150
Wing Loading: 1.3:1
Reserve: Performance Designs PDR 176
AAD: Airtec CYPRES
Helmet: SkySystems Benny(open face)
RSL: Yes, but not connected

ちなみに、11月25日にSIMが改訂されました
大きな変更点は、セクション2-1 H※で、CおよびDライセンス保持者の最低開傘高度。
今までは対地2,000ftでしたが、これが2,500ftに変更されています。

H. MINIMUM OPENING ALTITUDES
Minimum container opening altitudes above the ground for skydivers are:
1.Tandem jumps 4,500 feet AGL
2.All students and A-license holders 3,000 feet AGL
3.B-license holders 2,500 feet AGL
4.C- and D-license holders 2,500 feet AGL
(waiverable to a minimum altitude of 2,000 feet AGL)

これまでのC/Dライセンスの最低開傘高度は2,000ftで、1,800ftまでにカットするかどうか判断しろって、
「無理だろーw」
とか思ってたもんで、この改訂はよろしいかと。

※日本語版SIM2012-2013では、セクション2-1 Gに書いてあります。
セクション2-1 Eにアルコールとドラッグに関する記述があり、日本語版では抜けています。
追加され、最低開傘高度の項は2-1 Hに移動となりました。

酒飲んでジャンプとか正気の沙汰とは思えないし、ましてやドラッグなんてフザけんな、です。

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