ハンドル類の保護について

Age: 53 (Male)
Time in Sport: 30 years
Total Number of Jumps: 3,500-plus
Skydives Within the Last 12 Months: 200
Cause of Death: Exit時のリザーブキャノピー放出により、航空機の水平尾翼に激突し、頭部損傷

・概要
このジャンパーは、Aライセンスチェックダイブ担当中のインストラクターだった。
パイロットは13,500ftでジャンプランに入り、Exit前にエンジンの出力を落とし、機体を水平に保っていた。
6wayのExitに続き、クライムアウトを開始。
インストラクターはフローター(機外)で、スチューデントはバームアウト(機内)のポジション。
スチューデントは所定の位置へセットアップし、Exitのカウントを始めたが、この際にインストラクターの
リザーブリップコード(Dリング)をうっかり掴んでいた。

Exitカウントの途中、リザーブリップコードがハーネスから外れ、スチューデントは自分が
インストラクターのリザーブリップコードを握ってしまっていることに気付いた。
スチューデントはExitを中止しようと、インストラクターのハーネスを掴んだが、リザーブリップコードは握ったままだった。
インストラクターはそのまま飛び出した。
リザーブキャノピーが放出され、水平尾翼を飛び越え、開傘した。
それに伴い、インストラクターも機体後方へ引きずられた。

インストラクターは正常に開いたリザーブキャノピーで降下していたが、目撃者によると、なんら反応は無かったとのこと。
そのまま、ドロップゾーン風下3km地点にある森林地帯へ消えていった。
直ちに捜索を開始したが、翌日の朝、地上から5メートルほどで木に引っかかっている状態で発見された。(事故から14時間後)
監察医は、水平尾翼に衝突した時点で即死していたと判断した。

・結論
インストラクターは、ドックしない(ノーグリップ)状態でのExitを予定していた。
しかし、スチューデントはセットアップしながら誤ってリザーブリップコードを掴んでいた。
スチューデントはインストラクターを押し出すようなカウントを行った。【Ready, Set, GoのReady部分かと】
しかしそれは辛うじて識別できるほどの小さな動作で、インストラクターはタイミングを見失ったと思われる。
今回のExit方法について地上で何回リハーサルを行ったかは報告されていない。
スチューデントがクライムアウトを完璧に出来るよう、地上で繰り返し練習しておくべきであった。

スチューデントはリザーブリップコードがベルクロから外れた感触に気付いたが、インストラクターは注意を払っておらず、
リザーブリップコードが握られていることやExitを中止しようとしていることに気付かなかった。
もし気付いていれば、事故に至らなかった可能性が高い。
ジャンパーはExitの際の手や足の位置、コンテナのハンドル類について、充分な注意を払うべきである。
また、Exitの手順についてジャンプ前にきちんと計画し、練習しておくことが必要である。

スチューデントはリザーブリップコードを握ったままインストラクターのハーネスを掴んでExitを中止しようとしたが、
それよりも、手を離すほうが先決であった。
ジャンパーは、他者のハンドル類を正しい位置へ戻そうと試みるべきではない。
それによってさらに多くの問題が生じる危険性がある。

ここ最近では、リザーブリップコードが外れている状態でジャンプしたことによる事故例は報告されていない。
フリーフォール中にリザーブリップコードが外れているのを目撃された例はあるが、いずれも問題なくメインキャノピーを開傘できている。
これは、フリーフォールの風圧やメイン開傘時の衝撃程度では、リザーブリップコードを引ききるだけの力は無いことを示している。
もちろん、ハンドル類がきちんとベルクロで固定され、収納されているに越したことはない。

ピロータイプ(Dリングではなく、カッタウェイハンドルと似た形状)のリザーブリップコードは、ドアや他のジャンパーに引っかかる
可能性は低くなるものの、Dリングに比べてプルしづらい点に留意する必要がある。

System: Sun Path Javelin
Main: Performance Designs Navigator 260 ; Wing Loading: 0.8:1
Reserve: Flight Concepts Sharpchuter 254
AAD: Advanced Aerospace Designs Vigil
Helmet: Sky Systems USA Oxygn

「ジャンパーは、他者のハンドル類を正しい位置へ戻そうと試みるべきではない。」
と書いてあるけど、Exit前までに気付いた時点で注意して、自分で直させることはとても大事。
フリーフォール中に気付いたのであれば、不意のオープンに備えて、離れる。
自分のハンドルがプラプラしていたとしても、無理に直そうとして体勢を崩すほうがよっぽど危険だし、
フリーフォール中に直すのはまず不可能。
落ち着いてグループから離れ、不測の事態に備えましょう。

ドックして出る事も多いと思うけどね、
 ・チェストストラップを掴んでいるつもりで、Dリングも同時に掴んでいたら?
 ・グリップと間違えて、カッタウェイハンドルを掴んでいたら?
そんな馬鹿なw ・・・というシチュエーションで事故は起こります。