カテゴリー: スカイダイビング

ログ

1本目:リフレッシュRW
2本目:AFF Lv.1 (Reserve)

ランディング豆知識

かなりナイスな質問が来たので、ちょっと解説。

『ランディングの際、出来るだけノーブレーキを維持し、揚力をつけてフレアをかけて止まる。
と教わりますが、
では、
逆にターゲット直上付近でハーフブレーキ等で減速しつつ最終的に着地する事は可能なのですか?
出来るのであればそっちのほうが安全なのでは?
また、それが出来るのであれば、フレアって何のために?』

結論から言うと、たしかに前進スピードは遅いので安全そうに見えますが、沈下スピードをゼロにするだけの揚力が得られず、危険です。

スクエアキャノピーは目的地へ向かって「前進」するために作られたものです。
ABCDラインの長さが違う(フロントのAラインが短くて、リアのDラインが長い)のはご存知の通りですが、
これは、キャノピー全体を後ろから前に向かって傾斜させ、前進する力を得るためのものです。
揚力はありません。

ハーフブレーキをかけると、前進するスピードはフルグライド時の約半分になります。
ただ、沈下スピードは20%ほどしか変わりません。(=大きな揚力は得られない)

ランディング時に沈下スピードをゼロにするには、大きな揚力が必要です。
その揚力を得るためには、キャノピー全体を前から後ろへ傾斜させる必要があります。
飛行機がランディング直前に機首を上げるのと同じ。

ブレーキをかける

キャノピー本体の前進スピードを落とす

人間は慣性の力でキャノピーの前へ出ようとする

キャノピー全体が前から後ろへ傾斜する

揚力発生

という理屈です。
慣性の力が大きいほど、キャノピーの傾きが大きい=大きな揚力が得られます。

ハーフブレーキの状態で飛んでいる間は、キャノピーと人間のスピードは同じ=慣性力ゼロ、です。
前進する力が弱い上に、ブレーキを半分使ってしまっているので、そこからフレアをかけたとしても、
キャノピーと人間のスピード差(慣性力)を稼ぐことができません。
結果、沈下スピードをゼロにすることが出来ず、立てない・・・と。

「キャノピーが大きいからフレアが効かなくて立てない」
「地上風が弱いから立てない」

よく聞く言い訳ですが、沈下スピードをゼロにする方法やコツを知らないだけです。
かなり手前からトグルを軽く引いている人もいます。
フルグライドを心がけましょう。
恐怖心からか、腰が引けている人も多いですね。
フレアと同時に胸を張って、チェストストラップに体重を預けるようにしてみましょう。
スピードが出ていて怖いと思う人は、視線を真っ直ぐに、遠くを見るように。

必ず立てるようになります。

ハンドル類の保護について

Age: 53 (Male)
Time in Sport: 30 years
Total Number of Jumps: 3,500-plus
Skydives Within the Last 12 Months: 200
Cause of Death: Exit時のリザーブキャノピー放出により、航空機の水平尾翼に激突し、頭部損傷

・概要
このジャンパーは、Aライセンスチェックダイブ担当中のインストラクターだった。
パイロットは13,500ftでジャンプランに入り、Exit前にエンジンの出力を落とし、機体を水平に保っていた。
6wayのExitに続き、クライムアウトを開始。
インストラクターはフローター(機外)で、スチューデントはバームアウト(機内)のポジション。
スチューデントは所定の位置へセットアップし、Exitのカウントを始めたが、この際にインストラクターの
リザーブリップコード(Dリング)をうっかり掴んでいた。

Exitカウントの途中、リザーブリップコードがハーネスから外れ、スチューデントは自分が
インストラクターのリザーブリップコードを握ってしまっていることに気付いた。
スチューデントはExitを中止しようと、インストラクターのハーネスを掴んだが、リザーブリップコードは握ったままだった。
インストラクターはそのまま飛び出した。
リザーブキャノピーが放出され、水平尾翼を飛び越え、開傘した。
それに伴い、インストラクターも機体後方へ引きずられた。

インストラクターは正常に開いたリザーブキャノピーで降下していたが、目撃者によると、なんら反応は無かったとのこと。
そのまま、ドロップゾーン風下3km地点にある森林地帯へ消えていった。
直ちに捜索を開始したが、翌日の朝、地上から5メートルほどで木に引っかかっている状態で発見された。(事故から14時間後)
監察医は、水平尾翼に衝突した時点で即死していたと判断した。

・結論
インストラクターは、ドックしない(ノーグリップ)状態でのExitを予定していた。
しかし、スチューデントはセットアップしながら誤ってリザーブリップコードを掴んでいた。
スチューデントはインストラクターを押し出すようなカウントを行った。【Ready, Set, GoのReady部分かと】
しかしそれは辛うじて識別できるほどの小さな動作で、インストラクターはタイミングを見失ったと思われる。
今回のExit方法について地上で何回リハーサルを行ったかは報告されていない。
スチューデントがクライムアウトを完璧に出来るよう、地上で繰り返し練習しておくべきであった。

スチューデントはリザーブリップコードがベルクロから外れた感触に気付いたが、インストラクターは注意を払っておらず、
リザーブリップコードが握られていることやExitを中止しようとしていることに気付かなかった。
もし気付いていれば、事故に至らなかった可能性が高い。
ジャンパーはExitの際の手や足の位置、コンテナのハンドル類について、充分な注意を払うべきである。
また、Exitの手順についてジャンプ前にきちんと計画し、練習しておくことが必要である。

スチューデントはリザーブリップコードを握ったままインストラクターのハーネスを掴んでExitを中止しようとしたが、
それよりも、手を離すほうが先決であった。
ジャンパーは、他者のハンドル類を正しい位置へ戻そうと試みるべきではない。
それによってさらに多くの問題が生じる危険性がある。

ここ最近では、リザーブリップコードが外れている状態でジャンプしたことによる事故例は報告されていない。
フリーフォール中にリザーブリップコードが外れているのを目撃された例はあるが、いずれも問題なくメインキャノピーを開傘できている。
これは、フリーフォールの風圧やメイン開傘時の衝撃程度では、リザーブリップコードを引ききるだけの力は無いことを示している。
もちろん、ハンドル類がきちんとベルクロで固定され、収納されているに越したことはない。

ピロータイプ(Dリングではなく、カッタウェイハンドルと似た形状)のリザーブリップコードは、ドアや他のジャンパーに引っかかる
可能性は低くなるものの、Dリングに比べてプルしづらい点に留意する必要がある。

System: Sun Path Javelin
Main: Performance Designs Navigator 260 ; Wing Loading: 0.8:1
Reserve: Flight Concepts Sharpchuter 254
AAD: Advanced Aerospace Designs Vigil
Helmet: Sky Systems USA Oxygn

「ジャンパーは、他者のハンドル類を正しい位置へ戻そうと試みるべきではない。」
と書いてあるけど、Exit前までに気付いた時点で注意して、自分で直させることはとても大事。
フリーフォール中に気付いたのであれば、不意のオープンに備えて、離れる。
自分のハンドルがプラプラしていたとしても、無理に直そうとして体勢を崩すほうがよっぽど危険だし、
フリーフォール中に直すのはまず不可能。
落ち着いてグループから離れ、不測の事態に備えましょう。

ドックして出る事も多いと思うけどね、
 ・チェストストラップを掴んでいるつもりで、Dリングも同時に掴んでいたら?
 ・グリップと間違えて、カッタウェイハンドルを掴んでいたら?
そんな馬鹿なw ・・・というシチュエーションで事故は起こります。

AADとRSLの重要性

Age: 33 (Female)
Number of Jumps: 130
Time in Sport: Two Years
Cause of Death: メインをカット後、リザーブ開傘高度が低すぎ、地表に激突

・概要
通常のフリーフォールの後、2,500~3,000ftで開傘。
ラインオーバーが発生し、スピンし始めた。
4~5回スピンし、1,500~2,000ftでメインをカット。
体勢が崩れたまま500ftほど降下した後に安定を取り戻したが、そのままフリーフォールを継続。
地上に激突する寸前にリザーブリップコードをプルしたものの、キャノピーがフリーバッグから出る間も無く、即死。

・結論
目撃者の話によると、このジャンパーはメインをカットした後にリザーブリップコードを見失っているように見えた、とのこと。
スピンを伴うマルファンクションは、混乱した状況を招きやすく、カッタウェイハンドルやリザーブリップコードの位置が
分かりづらくなることがある。
また、ハーネスの装着具合、ジャンプスーツ、その他の装備、の影響で、その両方が見えにくくなることもある。
SIMのセクション4にて、緊急時の手順を開始する際には、まず、カッタウェイハンドルとリザーブリップコードの位置を確認するよう
勧告している。

このジャンパーは、RSLもAADも装備していなかった。
RSLは、メインをカットした際にリザーブキャノピーを自動で開傘させる機能である。
SIMのセクション5-3において、(特殊なケースを除き)すべてのジャンパーにRSLを装備することを勧告している。
AADは、リザーブキャノピーがオープンするのに最低限必要な高度で作動し、リザーブを開傘させる機能である。

RSLとAADは、あくまでもバックアップの機能として考え、マルファンクションの際には正しい緊急手順を行うべきである。
すべてのスカイダイバーは、地上で定期的に緊急時の手順を確認すべきである。
地上で正しく覚えていない場合、本当の緊急時に対応できない。

System: Not reported
Main: Performance Designs Sabre 190
Reserve: Para-Flite Swift 175
AAD: No
RSL: No

TSCでは、AADを装備していないギアでは飛べません。
装備していても、スイッチが入っていなければただの金属箱です。

RSLを装備していたとしても、コネクタが外れていれば動作しません。
誤ってスリーリングに掛かっていた場合、メインをカット出来ない最悪の事態となります。

ついでに、パーシャルマルファンクションの手順を再確認してくださいね。

急激なトグル操作によるラインツイスト

Age: 52 (Male)
Number of Jumps: 601
Time in Sport: Not reported
Cause of Death: ラインツイストの状態でスピンしながらハードランディング

・概要
通常のフリーフォール、および、正常な開傘。
約250ftにてラインツイストが発生し、スピンしたまま地上に激突。

・結論
開傘時、キャノピーに問題は無かった。
目撃者によると、このジャンパーは急激なトグルターンにより、ラインツイストしたとのこと。
地上風は約15ktで、乱気流が要因となった可能性もある。
ラインツイストの修復、あるいは、カットするには高度が足りなかった。

カテゴリーG(RWインストラクション)の地上トレーニングにおいて、急激なトグルターンがラインツイストを引き起こす
可能性について言及している。
すべてのジャンパーは、自分が使用するキャノピーの操作許容範囲を知っておく必要がある。

安全にカットできない低い高度で、回復不能な状況に直面した場合、リザーブを引くことを勧める。

System: Mirage G3
Main: Performance Designs Sabre 2 150
Reserve: Precision Aerodynamics Micro Raven 150
AAD: Airtec Cypres
RSL: No

最後の一文が微妙なんですが、
「Faced with an unrecoverable situation at an altitude too low for a safe cutaway,
a jumper has everything to gain and nothing to lose by deploying the reserve parachute.」
直訳すると、
「(安全にカットできない低い高度で、回復不能な状況に直面した場合、)
リザーブパラシュートを放出して、得るものはあっても、失うものは何も無い」
ってこと。

記憶に新しいんですが・・・
 ・ラインツイストでスピン
 ・メインをカットできず
 ・スピンしたままリザーブを放出
 ・ダウンプレーンでスピンしたまま落下
 ・リザーブキャノピーが電柱に引っかかり、無傷で生還
なんてこともありました。

カッタウェイハンドルは、「剥がして、引く」。
これも大事。

キャノピー後方の乱気流

Age: 39 (Male)
Time in Sport: 13 years
Total Number of Jumps: 2250
Skydives Within the Last 12 Months: 170
Cause of Death: メインキャノピーが潰れた状態でハードランディング

・概要
複数航空機を使用した大人数ジャンプの後、正常に開傘。
地上約40ftで、他のキャノピーの真後ろに接近。
メインキャノピーが潰れ、地面へハードヒット。
病院へ空路搬送されたものの、複数の骨折と内蔵損傷により数時間後に死亡。

・結論
60名によるラージフォーメーションに参加。
ラージフォーメーションでは、キャノピーが混雑する中での整然としたランディングパターンが要求される。
ファイナルアプローチにて、前を飛んでいるキャノピーの後方乱気流を受け、彼のキャノピーは完全に潰れた。

乱気流が発生する要因は複数あり、ジャンパーはそれを知っておく必要がある。
木や建物などの障害物による乱気流はもちろん、自身のキャノピーの真後ろにも乱気流は発生する。
SIMの第4章(カテゴリーC)で乱気流の影響について説明している。

このジャンパーは、前方のキャノピーの真後ろではなく、側方に避けることが出来れば、乱気流を受けなかったはずである。

System: Sun Path Javelin
Main: Performance Designs Velocity 111 ; Wing Loading: 1.8:1
Reserve: Performance Designs PD 126R
AAD: Airtec Cypres 2
Helmet: Full-face fiberglass shell (brand unknown)

ボクも上空で試したことがあるのですが、他のキャノピーの真後ろに入った瞬間、「バサッ」と煽られます。
前を行くキャノピーの背後に付かないのはもちろんですが、ファイナルアプローチで斜めに飛ぶこともやめましょう。
予期せず、他のキャノピーに乱気流の影響を与えるかもしれません。

ターンの角度

ファイナルターンの角度に制限が設けられました。
(マニフェストに資料があるので、目を通してくださいね)

135度とか270度って聞いても、『???』な人が意外と多いので、ちょっとだけ説明です。

赤い丸は、ファイナルターンの操作を開始する地点。(操作方法によって多少前後しますが)
まったくターンをせずに直進すると、もちろん0度。
斜め前なら45度。
横なら90度。
斜め後ろなら135度。
真後ろなら180度。

90度:ノーマルパターンで、AFFで教わる通り。
135度:90度と、さらに45度
180度:90度が2つ分
270度:90度が3つ分
もちろん、角度が大きくなればなるほど、高度ロスも大きくなります。

キャノピーの性能を引き出すためには、ファイナルターンが完了してからフレアをかけるまでの
フルグライドの状態が最低10秒間は必要なのだそうです。
言い換えれば、「ターンが終わってすぐにフレアをかけるようなランディングは失敗」ということ。

今月末まで、90度を超えるファイナルターンは禁止なので、上級者がどういうランディングをするか
じっくり観察してみましょう。

台風24号は、120度のフックターンで加速しながら直撃するそうです。
中心気圧が低いと危険(ローターン)なので、余裕をもって高めでお願いしますね。

ひこうき雲

ジブリ『風立ちぬ』の主題歌。
空に関わりの深い身として、心に染みる名曲。

安全に、そして、楽しく飛びましょう。

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白い坂道が 空まで続いていた
ゆらゆらかげろうが あの子を包む
誰も気づかず ただひとり
あの子は 昇っていく
何もおそれない そして舞い上がる

空に 憧れて 空を かけてゆく
あの子の命は ひこうき雲

高いあの窓で あの子は死ぬ前も
空を見ていたの 今はわからない
ほかの人には わからない
あまりにも 若すぎたと
ただ思うだけ けれどしあわせ

空に 憧れて 空を かけてゆく
あの子の命は ひこうき雲

空に 憧れて 空を かけてゆく
あの子の命は ひこうき雲

ナイトジャンプ映像

「なにも見えない」とか言われても、知ったこっちゃないっす。

~フリーフォール~
3wayスターでExitし、左右の360度ターン。
相手は見えているのに、距離感が合わなくて難しい。

~ランディング~
スポットライト直撃。(すみません)
1パス目のファーストランディングなのに、ライトをひっくり返しました。(ごめんなさい)
目印といえば目印なんですが、機材や配線がたくさんあるので、あそこに降りてはいけません。(もうしません)
少しだけオーバーするつもりだったんですが・・・。^^;

事故報告

東京スカイダイビングクラブのトップページに掲載されている事故報告書へリンクを張っておきます。
事故報告書(PDF)

「地表近くで急激な旋回を実施」との記述がありますが、つまり、ローターンです。
風は東南東から約15knot。
通常のパターンでベースレグに入り、ランディングエリアに差し掛かる直前、約200ftの高度から270度の左旋回で
南向きのファイナルアプローチへ。
砂利道を挟んで西側へアウトしました。

本人がどういう認識だったのか、今となっては知る由もありませんが、明らかに高度が足りませんでした。
ローターンがもたらす結果について、再度考えてみてください。

心より哀悼の意を捧げます。
Rest in Peace.